【1】 純粋自然科学の純粋心理学

自然科学は、世界を「物的事象」と「心的事象」とに分離した物心二元論を前提とする学問である。

その最初の出発点である純粋自然科学は、心的事象を問わず、物質自体そして物質同士の物理的因果関係のみを考察の対象とする純粋に物理的な学問である。

経験心理学は、爆発的な成功を収めたこの純粋自然科学から発生する。この学問は世界の残る一要素である心を扱うが、その目的は、動物や人間の一要素としての心的現象の解明である。心的現象を精神物理的連関の中に位置づけて考えようとする。したがって、この心理学は純粋自然科学の一分野である。

この心的なものを純粋自然科学から取り出し、それと対置させて主題化しようとする心理学が、純粋心理学(現象学的心理学)である。 *1

  自然科学┬─ 純粋自然科学*1
     ↑  └─ 純粋心理学*2
     ↓
 (超越論的)現象学

さしあたり、純粋自然科学と並行する純粋心理学が、どの程度可能かを問わねばならない。

*1:物的世界連関を対象とする :物理学、生物学、経験的心理学等

*2:心的領域を対象とする :現象学的心理学