2003-01-01から1ヶ月間の記事一覧

 【 大森荘蔵『知の構築とその呪縛』を読む 1  】 

ここでは、大森荘蔵『知の構築とその呪縛』を読みます。おそらく僕が最も影響を受けた哲学書であり、大森哲学はもちろん、哲学自体のおもしろさを教えてもらった本です。繰り返し繰り返しページを繰った本ですが、自分の原点は何なのか確認するためにも、今…

文庫版へのはしがき

ここでは、本書が生じた経緯と、内容の大まかな流れが記されている。【 本書が生まれた経緯について 】(p7) 「本書は元来放送大学設立に際して、その『人間の探求』コースの『知識と学問の構造』という専門科目のための教科書として『知の構築とその呪縛』と…

1. 概説的序論

「文明の危機だとか、文化の変革期、といった言葉が何時でも 叫ばれてきたのが近代の性格の一つであろう。それは生活と 思想との変化のテンポが速くなってきたことを示すものかもしれない。 その変化には短期的な波、中期的な波、長期的な波があるだろう。 1…

2. 略画的世界観

「1章で述べたように、現代のわれわれは自然科学が描く密画世界観の中で生き、考え、眺めている。その中でレヴィ・ストロース(Claude Levi-Strauss,1908〜)の呼ぶ「野生の思考」に近い略画世界観を了解するには、ただわれわれの想像の中でそれを構成し復元す…

3. 日本における略画世界

【 古代日本の神々 】前章で述べた略画的世界は、古来日本においても存在した。古代の日本は神々で溢れていた。『古事記』に登場する神だけでも三百を超え、一説には総神口は「八百万(やおらず)」とも言われる。その神は、アマテラス、スサノオといった人…

4. 西欧古代中世における略画的世界観

「前章で日本・中国の略画的世界観を見てきたが、今度は目を転じて西欧の古代中世のそれを見てみよう。そのとき東洋と西洋との間に驚くほどの類似性が見てとれるだろう。そのことは、略画的世界観というものが時代や文化の相違を超えた、ある条件の下での人…

5. 略画の密画化、その始まり

「洋の東西を問わず、古代中世の宇宙地図の中で天空部分、 すなわち、日月星辰はもっとも密画化が進んだものであった。 それに較べると、地上部分はおぼつかない略画にとどまっていた。 大地の形状ですらそれが球形として描かれるのには長い時間を要した。 …