2003-01-01から1年間の記事一覧

  【  読書ノート  】  

12/6 『経験主義のふたつのドグマ』(W.クワイン)id:Paul:2003120612/5 『存在と時間』(M.ハイデガー) id:Paul:2003120512/4 『世界の共同主観的存在構造 第二部』(廣松渉) id:Paul:2003120412/3 『世界の共同主観的存在構造 第一部』(廣松渉) id:Pa…

経験主義のふたつのドグマ

【経験主義のふたつのドグマ】経験主義とは、カルナップを代表とする論理実証主義者たちの考えを指す。 分析的真理、すなわち、事実問題とは独立に意味に基づく真理と、綜合的真理、すなわち、事実に基づく真理との間に、ある根本的な分裂があるという信念。…

カルナップ『言語の論理的構文論』

【カルナップのテーゼ】「準−構文的な述語が、形而上学の温床となる」「われわれが哲学に帰属させているものを構文論の中で扱う」【述語の種類】(『クワイン』p36)1. 記号−述語*1 :構文論的な述語*2 :構文論でない記号−述語*32. 記号−述語でない述語 :…

  【  クワイン『経験主義のふたつのドグマ』   】  

『経験主義のふたつのドグマ』(『論理的観点から』所載、飯田隆訳、1950)『現代思想の冒険者達 クワイン』(丹治信治、講談社、1997)(ページ数は、断りがない場合は『論理的観点から』より)

私と世界の関係、主客分離は擬似問題である。 (第二章、第三章)

「現存在はさしあたり自己の内面圏内に封じ込まれていて、それがなにかを志向し把捉するときになってはじめてそこから超え出てゆくというようなわけではない。むしろ現存在は、それの原義的な存在様相からいって、いつもすでに発見されている世界において出…

  【  M・ハイデガー『存在と時間』  】  

『存在と時間(上)』(ハイデガー選集、細谷貞雄他訳、理想社、1927)(以下、ページ数は選集版による)『存在と時間(上)』(細谷貞雄他訳、ちくま学芸文庫、1927)『存在と時間Ⅰ』( 原佑他訳、中公クラッシックス、1927)『存在と時間(上)』(桑木 務訳…

二 判断の認識論的基礎構造

第一節 判断論の心理学的諸相第二節 判断論の意味論的諸相第三節 判断論の構造論的位相

一 共同主観性の存在論的基礎

第一節 身体的自我と他在性の次元第二節 役柄的主体と対他性の次元第三節 先験的主観と共存性の次元

第二章 言語的世界の事象的存立構造

世界観のモデルの遍歴 中世 :生物をモデルに万物を了解 近世 :機械の存在構造に定位 現代 :言語存在の究明を手がかりに(?) 「言語は、分析してみると形而上学的な詭計にみち神学的な悪戯にみち*1、近代的分析的理性をことごとに翻弄する」(p47) 「言語…

第一章 現象的世界の四肢的存在構造

第一節 現象(フェノメノン)の対象的二要因●フェノメノンの対象的側面には、レアール(=所与)・イデアール(=etwas)な二肢的構造がある。「フェノメノンは、その都度与えられる所与以上の或るもの(etwas)”*1として”現れる」言い換えれば、意識は「必…

第一部序章 哲学の逼塞情況と認識論の課題

●1. 旧来の「主観−客観」図式の特徴 p71-1. 主観の「各私性」 :「主観は各自的な私の意識である」「感情移入共感」「群集心理」等、どこまでを私の意識と境界を引くのか?意識の各自性は、それぞれの脳の各自性ではない。 脳に意識は宿らない。意識と脳は密…

  【  廣松渉『世界の共同主観的存在構造Ⅰ』  】  

『世界の共同主観的存在構造』(廣松渉、勁草書房、1972)『世界の共同主観的存在構造』(廣松渉、講談社学術文庫、1972)(ページ数は勁草書房版です)

  【  下條信輔『意識とは何だろうか』  】  

『意識とは何だろうか』(講談社現代新書、下條信輔、1999)著者の基本的なスタンスはギブソンの「生態学的心理学」に近いのかな。人間の心といわれている現象は、脳だけによって創られるのではなく、「脳−身体−環境」という「関係」において形づくられるも…

 6 意識を定義する 

●6-1「意識の定義」p178脳内Nの発火があたれられた時、どのような基準が満たされたときに、そこに意識が宿るとみなされるかを判定する客観的な基準。意識がある状態、ない状態(睡眠)の境界を探る。1. 脳内Nの発火が、どのような条件を満たした時に、そこ…

 5 最大の謎「クオリア」 

●5-1「クオリアの内観的定義」p147:クオリアは、私達の感覚の持つ、シンボルでは表すことのできない、ある原始的な質感である。クオリアなしでは、私達の脳の情報処理能力は成立しない。信号としての痛み。●5-2「クオリアの情報処理の側面からの定義」p148…

 4 相互作用同時性の原理 

●4-1「因果性」 p117記述の枠組み(自然法則における記述の枠組み=時間、空間、要素、相互作用)を決定する原理因果性とは、そのシステムのある時刻τにおける状態が与えられた時、その状態において、またその状態のみから、その系のτ+dτ(微小時間後)にお…

 3 認識の要素 

●3-1認識の二大原理「認識のN原理」「認識におけるM原理」●3-2「相互作用描像」p86「ある心理的瞬間における認識の内容を、その瞬間の脳の中のNの発火と、その間の相互作用にのみ基づいて作り出すアプローチ」 (外部の状態はまったく関係ない) ←→「統計的…

 2 「反応選択性」と「認識におけるマッハの原理」 

●2-1「電気生理学」 :Nの発火状況を調べる方法p61(個々のN)細胞外電極法、細胞内電極法、(Nの広域活動)光計測法、PET、fMRI●2-2「反応選択性」p63バラを認識するためには、バラにだけ選択的に反応するNがあればよい。このようなNはバラに対して反応選…

 1 認識は「私」の一部である

●1-1「認識のニューロン原理」p35p57私たちの認識は、脳内のニューロン(脳内N)の発火によって直接生じる。認識に関する限り、発火していないNは、存在していないのと同じである。私たちの認識の特性は、脳内Nの発火の特性によって、そしてそれのみによって…

  【  茂木健一郎『脳とクオリア』メモ  】  

『脳とクオリア』 (茂木健一郎、日経サイエンス、1997)

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 1 】  

2003/10/11〜11/27にかけて、フッサールの『ブリタニカ草稿』をネット上でまとめました。それをupしています。フッサールは、初めに読んだ『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』が滅法おもしろく、その後『デカルト的省察』を挟み、『ブリタニカ草稿』を…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 2 】  

【目次】0 まえがき1 純粋自然科学の純粋心理学2 自己経験及び共同経験に関する純粋に心理的なことがら、志向的体験の全体的記述3 純粋心理学的なものの孤立した領野−現象学的還元及び真の内的経験4 形相的還元及び形相的な学としての現象学的心理学5 精密な…

解説

*1【厳密な学としての哲学】 フッサールが、厳密な学としての哲学(第一哲学)を志した経緯を説明します。彼が哲学を学んだ19c末〜20c初頭は、いわゆる「科学の危機」が叫ばれた時代です。 数学に例をとると、非ユークリッド幾何学の樹立は、従来直観的な真…

【まえがき】

現象学は、厳密な学としての哲学 *1を可能とし、あらゆる諸学問の方法論を革新する。この試みは、それと内容的にも方法的にも平行するアプリオリな純粋心理学(現象学的心理学)を生じさせる。この心理学は、従来の経験的心理学に確実な基盤を与える。また、…

解説

*1【3つの心理学】 純粋自然科学の一分野として経験心理学が産まれ、そこから分離した純粋心理学(現象学的心理学)は経験心理学を基礎づける基礎学でもあります。のちにこの心理学は不完全であることが言及され、より哲学的かつすべての諸学問を基礎付ける…

【1】 純粋自然科学の純粋心理学

自然科学は、世界を「物的事象」と「心的事象」とに分離した物心二元論を前提とする学問である。その最初の出発点である純粋自然科学は、心的事象を問わず、物質自体そして物質同士の物理的因果関係のみを考察の対象とする純粋に物理的な学問である。経験心…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 4 】  

Ⅰ 純粋心理学、それの経験領野、それの方法及びそれの機能

解説

*1【現出・現出物について】非反省時には我々の意識には「現出物」があり、反省によって初めて「現出」が捉えられます。この違いをサイコロで説明します。普段の非反省時、我々がサイコロを見ているとは、目の前の物体がサイコロであること意識して、つまり…

【2】 『自己経験及び共同経験に関する純粋に心理的なことがら、志向的体験の全体的記述』

純粋心理学としての心を解明する上で手がかりとなるのは、我々自身の純粋な経験の固有性である。この経験の分析を通じて、意識の構造、性質に迫る。(ノエマの分析を手がかりにノエシスに迫る)我々自身の経験に目を向けるとは「反省」、つまりそれまで他に…

解説

*1【なぜ純粋意識を取り出すことが必要なのか?】フッサールは前述の学問の危機の原因を、諸学問に確実な基礎づけがなされていないからだと考えました。科学が用いる基本的な概念やカテゴリーは、通常、日常的経験から無反省に持ち込まれたものです。日常的…