3 認識の要素 

●3-1
認識の二大原理
「認識のN原理」「認識におけるM原理」

●3-2
「相互作用描像」p86
「ある心理的瞬間における認識の内容を、その瞬間の脳の中のNの発火と、その間の相互作用にのみ基づいて作り出すアプローチ」 (外部の状態はまったく関係ない)
   ←→「統計的描像」 :ある瞬間の脳の状態(そして、すなわちその瞬間の認識の内容)を抽象的なアンサンブルの中のその状態の位置付けによって特徴付けようとする
    →現象学との共通点。外部の状態は関係ない。ただし、現象学は心の表象を。茂木は脳内Nのみを手がかりとする。

●3-3
「相互作用描像に基づく認識理論の構築」p87
1. 認識に関する限り、発火していないNは、存在していないのと同じである。 p87
   物質としてのNでなく、発火というイベントのみ有効とする。

2. 「相互作用連結性」:シナプス前側のNとシナプス後ろ側のNが共に発火して初めて相互作用連結性(要素と要素が相互作用を通して結びつく)が成立する可能性が出てくる。 p90
 興奮性結合における相互作用連結性 :正の相互作用連結性
 抑制性結合  〃             :負の  〃

3. 相互作用連結性は、私たちの脳内Nの発火から、心という一つのシステムが出来上がっていく際の必要条件を与える。p95
    発火のしきい値しきい値を超えれば意識が生じる。

4. 認識の時空≠Nのある物理的時間・空間 p98
 . 認識の要素(色、テクスチャ、形・・)はどのように構成されるか? p98
  認識の要素を司る原理と、認識の時空の構成を司る原理は、同じものでなくてはならない。同時に。自己組織的に。
  それを、Nで説明する。「Nの発火 → 認識の要素 in 認識の時空」
  「Nの発火パターンから、認識の空間がどのように構成されるのか?」

5. 認識の要素がいかにして成立するか? p99
 末端Nから高次野のNに至る一連の発火の連鎖(クラスター)が、認識の要素となる。
   「クラスター」 :相互作用連結なNの発火のつながり p100
「認識の要素」
 :末端のNから高次野のNに至る、(正の)相互作用連結なNの発火のクラスターである。
  負の相互作用連結は認識の要素の構成には参加しない。

6. 「相互作用同時性の原理」p104
  :ある二つのNの発火が相互作用連結な時、相互作用の伝播の間、固有時は経過しない。
   すなわち、相互作用連結なNの発火は、(固有時τにおいて)同時である。
        固有時:認識の準拠枠となる時間(≒心理的時間?)
  バラを認識する一連のNの発火は、心理的時間(≒τ)において、同時であるとみなす。

7. 認識は非局所的プロセスである。p107
物理的時空においてNの発火は非局所的だが、認識の時空では(バラの表象)一つの場所を占めている。
「認識が非局所的なのは、あくまでも物理的時空の中でのことであって、認識の時空の中では、認識はあくまでも局所的なプロセスである」 p108
認識を構成するプロセス=物理的時空において非局所的なプロセス=認識の時空において局所的なプロセス

8. 結びつけ問題はなくなる。p110
この問題は反応選択性という誤った概念による擬似問題。

●3-4
まとめ p111
あるNの発火が認識の中で果たす役割は、反応選択性によって決まらない
              ↓
あるNの発火が認識の中で果たす役割は、他のNの発火との相互関係によってのみ決まる(認識におけるM原理)
              ↓
認識の要素は「相互作用連結なNの発火のクラスターである」と定義すると、認識におけるM原理を満たすように認識とNの発火の間の関係を定式化できる。
              ↓
反応選択性のパラダイムの下で問題だった結びつけ問題は、新しい認識の要素の定義の下では、自然に解決される。

●3-5
問い
「同じNの発火でありながら、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚等の間に顕著な差があることは驚くべきことである」 p96
この様相の差は、視覚系、聴覚系のそれぞれのN発火パターンと、その相互依存関係から、説明されねばならない。