2 「反応選択性」と「認識におけるマッハの原理」 

●2-1
電気生理学」 :Nの発火状況を調べる方法p61
(個々のN)細胞外電極法、細胞内電極法、(Nの広域活動)光計測法、PET、fMRI

●2-2
反応選択性」p63
バラを認識するためには、バラにだけ選択的に反応するNがあればよい。このようなNはバラに対して反応選択性を持つという。高次(視覚)野に行くに従って複雑な反応選択性を持つNが存在する
ex)方向選択性を持つN、色の恒常性p64

反応選択性が現在の認識理論の前提としているところ
「ある特徴Aに対して、反応選択性を持つNが発火した時に、特徴Aの認識が生じる」p67
  →外部の状況が、認識に関係しているとする。これは×。1-1.1-2を見よ
しかし、反応選択性では、認識を説明できない。 

●2-3
「反応選択性の欠陥 1」p68
1-1の認識のN原理に反する。
「反応選択性という概念は、外界に一つ一つの個性の定まった物体が存在することを前提にした上で、それらの物体のうちどの範囲の物体に選択的にNが発火するかを考える。反応選択性という概念には、その定義からすでに外界に関する知識が前提として含まれている」

実験。p69 ?
実験者が被験者のNを観察する。被験者がバラを見たとき、あるNが反応した。これでバラを認識するメカニズムを発見したと思い込む。これは間違い。反応選択性とは、(第三者の)観察者から見た、「外界のバラ ←→ 被験者のN」 の関係に過ぎない。一方、被験者の立場から見れば、彼にとってのすべては自分の中のNである(認識のN原理)。
被験者が外界を見ているといっても、それは、Nが発火して作り上げているイメージに過ぎない。反応選択性は、バラと被験者のNを両方見られる観察者にとってこそ意味のある概念だが、被験者の認識のメカニズムとは関係がない。

●2-4
「反応選択性の欠陥 2」p70
「高次視覚野においては、そもそも反応選択性を実験的に検証することも、概念として操作的に定義することも非常に困難である。反応選択性を、高次視覚野のNについて実験的に検証することはほとんど不可能」
「反応選択性が認識を説明する基本原理とすれば、認識に直接寄与する高次視覚野に行けば行くほど反応選択性を定義することが難しい」p72

●2-5
認識におけるマッハの原理(M原理)」p77
認識において、Nの発火が果たす役割は、そのNと同じ瞬間に発火している他のすべての関係によって、またそれによってのみ決定される

cf)「マッハの原理」
「ある物体の質量は、その物体の周りのすべての物体との関係で決まる。ほかに何もない空間の中では、ある物体の質量は、何の意味もない」。それ自体で存在する絶対空間、絶対時間の存在の否定。
ここの物質という固有の属性と思われるものでさえ全体の関係性の中から決定されてくる。

●2-6
Nの識別原理」p77
「その発火が、ある視覚特徴Aを認識させるN(A・N)は、ある瞬間の脳内のNの発火の性質によって、またそれによってのみ識別されなければならない。A・Nだけ取り出して発火させても視覚Aは生じない。単独に切り離されたNは何の意味もない。
カエルN :そのNと同じ瞬間に発火している他のすべてのNとの関係によって、「カエルN」の属性を与えられているN。

●2-7
「認識におけるマッハの原理」の効用 p79
1. 反応選択性の概念に変わる新たな選択肢となる
2. 高次野ほど重要で、低次野は中継点に過ぎないという考え方の排除
3. N間のシナプス結合のパターンのもつ意味に、新たな光を当てる。

反応選択性 ・・直列構造 :伝統的計算法
マッハの原理 ・・並列構造 :コネクショニズム
電気生理学は反応選択性に頼り、効果をあげている。(M原理は実験においてなんら役に立たない)
 つまり、ある程度の意味を持つ。では、この両原理の関係は?

●2-8
「M原理」と「反応選択性」の関係まとめ p81
  反応選択性は、実験場も理論上も重要な概念だ。
            ↓
  だが、反応選択性には、認識を説明する原理として致命的欠陥を持つ
            ↓
  M原理が健全な出発点だ
            ↓
  だがM原理は観測可能な量を定義できない
            ↓
  結局、反応選択性を実験データの解析上使い続けるしかない