2003-11-01から1ヶ月間の記事一覧

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 1 】  

2003/10/11〜11/27にかけて、フッサールの『ブリタニカ草稿』をネット上でまとめました。それをupしています。フッサールは、初めに読んだ『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』が滅法おもしろく、その後『デカルト的省察』を挟み、『ブリタニカ草稿』を…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 2 】  

【目次】0 まえがき1 純粋自然科学の純粋心理学2 自己経験及び共同経験に関する純粋に心理的なことがら、志向的体験の全体的記述3 純粋心理学的なものの孤立した領野−現象学的還元及び真の内的経験4 形相的還元及び形相的な学としての現象学的心理学5 精密な…

解説

*1【厳密な学としての哲学】 フッサールが、厳密な学としての哲学(第一哲学)を志した経緯を説明します。彼が哲学を学んだ19c末〜20c初頭は、いわゆる「科学の危機」が叫ばれた時代です。 数学に例をとると、非ユークリッド幾何学の樹立は、従来直観的な真…

【まえがき】

現象学は、厳密な学としての哲学 *1を可能とし、あらゆる諸学問の方法論を革新する。この試みは、それと内容的にも方法的にも平行するアプリオリな純粋心理学(現象学的心理学)を生じさせる。この心理学は、従来の経験的心理学に確実な基盤を与える。また、…

解説

*1【3つの心理学】 純粋自然科学の一分野として経験心理学が産まれ、そこから分離した純粋心理学(現象学的心理学)は経験心理学を基礎づける基礎学でもあります。のちにこの心理学は不完全であることが言及され、より哲学的かつすべての諸学問を基礎付ける…

【1】 純粋自然科学の純粋心理学

自然科学は、世界を「物的事象」と「心的事象」とに分離した物心二元論を前提とする学問である。その最初の出発点である純粋自然科学は、心的事象を問わず、物質自体そして物質同士の物理的因果関係のみを考察の対象とする純粋に物理的な学問である。経験心…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 4 】  

Ⅰ 純粋心理学、それの経験領野、それの方法及びそれの機能

解説

*1【現出・現出物について】非反省時には我々の意識には「現出物」があり、反省によって初めて「現出」が捉えられます。この違いをサイコロで説明します。普段の非反省時、我々がサイコロを見ているとは、目の前の物体がサイコロであること意識して、つまり…

【2】 『自己経験及び共同経験に関する純粋に心理的なことがら、志向的体験の全体的記述』

純粋心理学としての心を解明する上で手がかりとなるのは、我々自身の純粋な経験の固有性である。この経験の分析を通じて、意識の構造、性質に迫る。(ノエマの分析を手がかりにノエシスに迫る)我々自身の経験に目を向けるとは「反省」、つまりそれまで他に…

解説

*1【なぜ純粋意識を取り出すことが必要なのか?】フッサールは前述の学問の危機の原因を、諸学問に確実な基礎づけがなされていないからだと考えました。科学が用いる基本的な概念やカテゴリーは、通常、日常的経験から無反省に持ち込まれたものです。日常的…

【3】 『純粋心理学的なものの孤立した領野 ─ 現象学的還元および真の内的経験』

現象学的心理学は、あらゆる外的な影響から切り離された純粋な心理経験と、それが生じる領野(主観)を研究対象とする。しかし、従来の心理学(経験心理学)では、経験を純粋に捉えることはできない。なぜなら経験心理学における心的経験とは、外部世界(身…

解説

*1【形相的還元】形相的現象学における還元が「形相的還元」です。これにより、事物の本質形式(形相)を取り出すこと(本質直観)が可能となります。 現象学的還元 − 意識体験の領域をその個別的事実において探求。 形相的還元 − 意識体験の領域の普遍的な本…

【4】 形相的還元および形相的な学としての現象学的心理学

現象学的心理学には、(これまで述べた)事実的な領域を扱う方法(現象学的還元)と、アプリオリで本質的な領域を扱う方法がある。後者が「形相的現象学」である。現象学においては、事実性の探求よりも本質性のそれがより重要である。心理学的現象学は、こ…

解説

*1【総合】意識経験は多様な個別的体験(現出)であるにも関わらず、それを一つの経験として結びつける能力を持ちます。その能力が「総合」(「流れ去る多様の統一」)です。総合には幾つかの種類があります。 a 多様な現出を一つの統一した対象としての現出…

【5】 精密な経験的心理学に対する純粋に現象的な心理学の原理的な機能

純粋自然科学を範とする経験的心理学は、現象学的心理学によって基礎付けられねばならない。さらに純粋自然科学そのものも、そこで使われるあらゆるあいまいな概念と規則をこの学によって根本的に検討し直されねばならない。現象学的心理学の体系化のために…

解説

*1【越論的哲学の始祖としてのデカルト】(まえがき*2 で述べたように)デカルトによる純粋に思惟する自我への還帰は、超越論哲学への道を切り開きました。デカルトは、すべての存在意味と存在妥当がそこから発生する主観にたどり着きます。しかし、その発見…

【6】 デカルトの超越論的転回とロックの心理学

現象学的心理学は経験的心理学を基礎づけるだけでなく、超越論的現象学の前段階でもある。超越論的哲学はデカルトに始まる*1。超越論的問題が生じるに及んで、主観は二重の意味を得る*2。その二重性はそのまま心理学の二重性(現象学的心理学、超越論的現象…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 9 】  

Ⅱ 現象学的心理学と超越論的現象学

解説

*1【世界に対する3つの態度】 自然的態度 世界の存在を自明とする日常的態度 自然主義的態度 科学によって理念化された客観世界を自覚する科学的態度。外部世界の存在を自明とするのは前者と同様だが、自然的態度における世界とは主観的相対的なそれで、こち…

【7】 超越論的問題

自然的態度によって我々の日常生活が営まれ、それを基盤に実証諸学問が構築される。超越論的現象学はこの自然的態度をエポケーし、超越論的態度へと移行する。*1 それにより、存在者の意味形成と存在妥当の場が、外部世界から主観性へと移る。「意識主観性の…

解説

*1【超越論的主観性と心的主観性】この辺りくどいですが、もう一度「心的主観」「超越論的主観」の違いを確認しておきましょう。( 前書き*2、6節*2参照)日常の我々にとって世界が実在することは自明です。私の心とは、物質と対置された心的実体として世界…

【8】 超越論的循環としての心理学的解決

超越論的現象学の主題は、可能的な世界一般、つまり潜在的地平を含んだ全体的地平(「世界」)における多様な志向的関係性を具体的かつ体系的に解明することにある。「世界」の完全かつ全体的な存在意味が、普遍的にそしてかかる世界に対する構成的な諸カテ…

解説2

*4【心的主観性と超越論的主観性の関係】心的主観性も、超越論的主観性で意味を獲得された二次的なものです。(3a. 4-2の層において)すべてに先立つのは超越論的主観性ですが、その自我は、私を世界内部の存在とするような自己統覚機能が固有領域において働…

世界、他我の構成の仕方

a 現象学における他我の問い方 b 世界の意味の現れ方(総論) c 他我の意味の構成 d 客観世界の意味の構成 *3a【現象学における他我の問い方】「他我という意味は、いかにしていかなる志向性によって、いかなる総合において、そしてどのような動機付けに基づ…

解説1

*1【現象学的心理学と超越論的心理学の平行論】「あらゆる超越的な現象学的教説を、自然的な実証性の教説へと変換する可能性を明らかに示す」(p112) 「この経験的な現象学は、実証的な諸学問の完全な体系的全体と同一である」(p116)ただし、超越論的経験…

【9】 超越論的−現象学的還元および二重化の超越論的仮象

では、我々の主体は二つ(心的主観性、超越論的主観性)に分離しているのであろうか?もちろんそうではない。心的主観性(及びそれと対置して存在する世界)の存在は超越論的主観性を前提とする。たとえば知覚体験は、心的主観性においては外部の存在者から…

解説

*1【歴史の目的論】後述

【10】 超越論的現象学に対する予備学としての純粋心理学

超越論的現象学の体系的な展開は、純粋心理学(現象学的心理学)のそれから独立してある。他方、純粋心理学は、超越論的現象学の予備学として有用である。哲学と心理学の歴史は、哲学の最終形態である超越論的現象学に至る道程であった。*1自然的見方(科学…

解説

*1【普遍的存在論】後述

【11】 存在論としての超越論的現象学

超越論的現象学は、アプリオリな諸学の体系的統一を可能とする普遍的存在論を実現する。現象学は、客観的存在者だけでなく、あらゆる可能的な存在者(存在者一般)に関するアプリオリな学である。というのも、存在者一般は、その存在意味と妥当とを、対象と…