【5】 精密な経験的心理学に対する純粋に現象的な心理学の原理的な機能

純粋自然科学を範とする経験的心理学は、現象学的心理学によって基礎付けられねばならない。さらに純粋自然科学そのものも、そこで使われるあらゆるあいまいな概念と規則をこの学によって根本的に検討し直されねばならない。

現象学的心理学の体系化のために、次のことがらが明らかにされなければならない。

  1. 志向性 :志向的体験一般の本質構造(総合)の解明。
  2. 総合  :志向的体験における個別的諸形態の究明。諸総合の様々な類型の解明。*1
  3. 意識流 :心の深底において多様に流れ去る経験を統一し、一つの意識として統合するもの(意識流)の本質記述。*2
  4. 受動性 :自我に属する習慣性の探求は、新たに受動的次元を開く。*3

4において、従来の「静的現象学」から受動的次元を扱う「発生的現象学」への移行がなされる。*4 

発生的現象学において、対象を構成する超越論的自我の能動的な働きに先立つ、受動的先構成の次元が明らかにされる。そこで働く作用が「連合」である。*5

能動的な経験は自我の受動的次元へと沈殿し、習慣化され、自らを形成しつづける人格的自我として解明される。