【7】 超越論的問題

自然的態度によって我々の日常生活が営まれ、それを基盤に実証諸学問が構築される。超越論的現象学はこの自然的態度をエポケーし、超越論的態度へと移行する。*1 

それにより、存在者の意味形成と存在妥当の場が、外部世界から主観性へと移る。

「意識主観性の意識生命において世界は、そのおりそのおりの意味を持つ<この>世界として立ち現れる」(p99)
「世界の意味と存在妥当は主観のうちで与えられる」

世界存在の解明は、主観のうちで構成される志向的対象としての世界に向けて問われねばならない。
この態度変更は、従来の哲学問題は次のように変換する。

「世界は存在するのか?」
→「世界の確信はいかにして主観の内で生じてくるのか?」
「事物Aとは何か?」
→「主観の内で構成される事物Aの意味の構造はいかなるものか?」

また、超越論的主観性の作用は、現実に実在する世界に限らず可能的(可能性として考えられる)世界をも射程においている。通常可能的世界は、潜在的背景として意識の背後に退いている。その潜在的背景を地平と呼ぶ。*2