2003-01-01から1年間の記事一覧

【3】 『純粋心理学的なものの孤立した領野 ─ 現象学的還元および真の内的経験』

現象学的心理学は、あらゆる外的な影響から切り離された純粋な心理経験と、それが生じる領野(主観)を研究対象とする。しかし、従来の心理学(経験心理学)では、経験を純粋に捉えることはできない。なぜなら経験心理学における心的経験とは、外部世界(身…

解説

*1【形相的還元】形相的現象学における還元が「形相的還元」です。これにより、事物の本質形式(形相)を取り出すこと(本質直観)が可能となります。 現象学的還元 − 意識体験の領域をその個別的事実において探求。 形相的還元 − 意識体験の領域の普遍的な本…

【4】 形相的還元および形相的な学としての現象学的心理学

現象学的心理学には、(これまで述べた)事実的な領域を扱う方法(現象学的還元)と、アプリオリで本質的な領域を扱う方法がある。後者が「形相的現象学」である。現象学においては、事実性の探求よりも本質性のそれがより重要である。心理学的現象学は、こ…

解説

*1【総合】意識経験は多様な個別的体験(現出)であるにも関わらず、それを一つの経験として結びつける能力を持ちます。その能力が「総合」(「流れ去る多様の統一」)です。総合には幾つかの種類があります。 a 多様な現出を一つの統一した対象としての現出…

【5】 精密な経験的心理学に対する純粋に現象的な心理学の原理的な機能

純粋自然科学を範とする経験的心理学は、現象学的心理学によって基礎付けられねばならない。さらに純粋自然科学そのものも、そこで使われるあらゆるあいまいな概念と規則をこの学によって根本的に検討し直されねばならない。現象学的心理学の体系化のために…

解説

*1【越論的哲学の始祖としてのデカルト】(まえがき*2 で述べたように)デカルトによる純粋に思惟する自我への還帰は、超越論哲学への道を切り開きました。デカルトは、すべての存在意味と存在妥当がそこから発生する主観にたどり着きます。しかし、その発見…

【6】 デカルトの超越論的転回とロックの心理学

現象学的心理学は経験的心理学を基礎づけるだけでなく、超越論的現象学の前段階でもある。超越論的哲学はデカルトに始まる*1。超越論的問題が生じるに及んで、主観は二重の意味を得る*2。その二重性はそのまま心理学の二重性(現象学的心理学、超越論的現象…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 9 】  

Ⅱ 現象学的心理学と超越論的現象学

解説

*1【世界に対する3つの態度】 自然的態度 世界の存在を自明とする日常的態度 自然主義的態度 科学によって理念化された客観世界を自覚する科学的態度。外部世界の存在を自明とするのは前者と同様だが、自然的態度における世界とは主観的相対的なそれで、こち…

【7】 超越論的問題

自然的態度によって我々の日常生活が営まれ、それを基盤に実証諸学問が構築される。超越論的現象学はこの自然的態度をエポケーし、超越論的態度へと移行する。*1 それにより、存在者の意味形成と存在妥当の場が、外部世界から主観性へと移る。「意識主観性の…

解説

*1【超越論的主観性と心的主観性】この辺りくどいですが、もう一度「心的主観」「超越論的主観」の違いを確認しておきましょう。( 前書き*2、6節*2参照)日常の我々にとって世界が実在することは自明です。私の心とは、物質と対置された心的実体として世界…

【8】 超越論的循環としての心理学的解決

超越論的現象学の主題は、可能的な世界一般、つまり潜在的地平を含んだ全体的地平(「世界」)における多様な志向的関係性を具体的かつ体系的に解明することにある。「世界」の完全かつ全体的な存在意味が、普遍的にそしてかかる世界に対する構成的な諸カテ…

解説2

*4【心的主観性と超越論的主観性の関係】心的主観性も、超越論的主観性で意味を獲得された二次的なものです。(3a. 4-2の層において)すべてに先立つのは超越論的主観性ですが、その自我は、私を世界内部の存在とするような自己統覚機能が固有領域において働…

世界、他我の構成の仕方

a 現象学における他我の問い方 b 世界の意味の現れ方(総論) c 他我の意味の構成 d 客観世界の意味の構成 *3a【現象学における他我の問い方】「他我という意味は、いかにしていかなる志向性によって、いかなる総合において、そしてどのような動機付けに基づ…

解説1

*1【現象学的心理学と超越論的心理学の平行論】「あらゆる超越的な現象学的教説を、自然的な実証性の教説へと変換する可能性を明らかに示す」(p112) 「この経験的な現象学は、実証的な諸学問の完全な体系的全体と同一である」(p116)ただし、超越論的経験…

【9】 超越論的−現象学的還元および二重化の超越論的仮象

では、我々の主体は二つ(心的主観性、超越論的主観性)に分離しているのであろうか?もちろんそうではない。心的主観性(及びそれと対置して存在する世界)の存在は超越論的主観性を前提とする。たとえば知覚体験は、心的主観性においては外部の存在者から…

解説

*1【歴史の目的論】後述

【10】 超越論的現象学に対する予備学としての純粋心理学

超越論的現象学の体系的な展開は、純粋心理学(現象学的心理学)のそれから独立してある。他方、純粋心理学は、超越論的現象学の予備学として有用である。哲学と心理学の歴史は、哲学の最終形態である超越論的現象学に至る道程であった。*1自然的見方(科学…

解説

*1【普遍的存在論】後述

【11】 存在論としての超越論的現象学

超越論的現象学は、アプリオリな諸学の体系的統一を可能とする普遍的存在論を実現する。現象学は、客観的存在者だけでなく、あらゆる可能的な存在者(存在者一般)に関するアプリオリな学である。というのも、存在者一般は、その存在意味と妥当とを、対象と…

  【 E・フッサール 『ブリタニカ草稿』を読む 14 】  

Ⅲ 絶対的な基礎づけのうちにある普遍的な学としての超越論的現象学と超越論的哲学

解説

*1【独断論】通常言われる「独断論」とは、「理性の能力を吟味することなく、経験の内部においてのみ妥当する概念を経験を越えた対象へと適用すること」です。そしてこのカント的な定義において、世界の実在とは経験の内部において妥当するものです。しかし…

【12】 現象学と精密諸科学の根本的危機

自然的態度を基とした実在論を放棄する理由は次の通りである。 あらゆる存在者の意味と存在妥当はそれ自体で存在しているわけではない。 それらは超越論的主観性の能動的・受動的能作に従って規定される。 実証科学はもちろん、数学や論理学は、研究対象──実…

【13】 事実学と経験的現象学との現象学的な基礎づけ

それぞれの経験的な諸学問は、現象学によって基礎づけられることにより、真にアプリオリである普遍的存在論へと統一される。 実証科学の真正の形態は、超越論的還元によって基礎づけられた現象学的な形態── 経験的現象学──である。この経験的現象学は、形相…

解説

*1【第一哲学】【第二哲学】後述 *2【諸学と哲学の関係】後述

【14】 全体的哲学としての完全な現象学

ここにおいて伝統的な哲学──普遍的な学としての哲学──が復興される。この哲学は、次の二つの領域に分かれる。 第一哲学 形相的現象学(普遍的存在論) 第二哲学 経験的現象学(事実の全体を総合的に包括する超越論的な間主観性に関する学) 第二哲学は第一哲…

解説

*1【超越論的経験】現象学おける「経験」とは、客観物や客観的自体についての主題的・客観的な「判断」と区別され、それらの判断に先立ち、それらを可能としている基盤としての前述語的な「経験野」のことです。(『経験と判断』)経験はたんなる事実経験で…

【15】 現象学的問題としての最高かつ究極の問題

全ての理性的問題は、現象学のうちにある。伝統的な哲学問題は、現象学における超越論的経験 *1 と形相的直観という絶対的な源泉によってその基礎づけと解決の道程を得ることができる。現象学により、主観の目的論的構造が捉えられ *2、さらには、実践を行う…

解説

*1【具体的な直観的所与性から抽象的な本質へと至る現象学】特定のアプリオリな原理を前提にし、そこから演算的に体系構築を試みる「上からの」哲学に反し、「事象そのものへ!」をモットーとする現象学は、「真」の顕現の場である経験野に与えられる現象を…

【16】 あらゆる哲学的対立の現象学的解決

具体的な直観的所与性から抽象的な本質へと至る現象学は*1、古くからの哲学的対立を解消する。*2 1合理論(プラトン主義)と経験論 験論は、最も普遍的な経験論(現象学)によってのみ克服される。 2相対主義と絶対主義 対主義は最も普遍的な相対主義(現象…