【12】 現象学と精密諸科学の根本的危機

自然的態度を基とした実在論を放棄する理由は次の通りである。

  1. あらゆる存在者の意味と存在妥当はそれ自体で存在しているわけではない。
  2. それらは超越論的主観性の能動的・受動的能作に従って規定される。

実証科学はもちろん、数学や論理学は、研究対象──実証科学では客観世界、数学や論理学は数や論理──がそれ自体で意味を持って存在しているという素朴な確信(独断論) *1 をやめ、その前提自体を現象学によって基礎づけねばならない。それによって初めて、諸学問は厳密な学問となりうる。

諸学問は、現象学による形相的な普遍的存在論を構成する一領域として存在する。