4. カントを超える試み(『講義』p98_1)

ドイツ観念論者は、カントが直示的性格を持たないとした理念を「絶対者の知的直観」
により認識できるとした。理念(神、世界、人間)は感性的な対象(事物)ではない。
非感性的な非対象である。非対象の認識は「知的直観」によって行われる。
(例えば数学的真理、感性の形式「時間」「空間」)。存在者全体がそこで把握される
体系は、絶対知により認識される。これにより、体系の基盤は強固なものとなる。

はたしてこれは「独断論」であろうか。
いや、そうではない。独断論は絶対者(理念)という「対象」の可知性を当然とみなす。
しかし、観念論者は、「知のうちに絶対者が存在し、知は絶対者のうちに存在する」とする。
絶対者は主観や客観の中に存在するのではなく、知のうちに存在する。
結構は知そのもののうちで育成してくる。