【 人間の存在について 】  

「私は私の生命のみじかい期間が、これまでのそうしてこれから先の
永遠のうちに吸い込まれて失せるのを眺めるとき、
また私の占めている、私の眼に映りさえもする小さな空間が、
私の知らない、私を知ってくれぬもろもろの空間の無限の広がりのうちに
沈み入るのを眺めるとき、自分はどういうわけでこの処にいてあの処にいないのか、
それを怖れ、それをいぶかしくおもう。

なぜなら私が何ゆえにここにいてあそこにいないのか、
なにゆえに今いてあの時にいないのか、
その理由といっては少しもないからである。

誰が私をここにおいたのか、いかなるものの命令と処置とによって
この処とこの時とは私にふりあてられたのか。」*1
             (パスカル『パンセ』205)

 
「人間の盲目と惨めとを見るとき、全宇宙の沈黙しているのを眺めるとき、
また人間が、光をもたず独りうち捨てられ、宇宙のこの一隅にさまようてい、
誰によってここに自分は置かれたのか、何をしにここに自分は来たのか、
死んだら自分はどうなるのかを知ることなく、
何を認識する能力ももたずにいるのを眺めるとき、
私は、恐ろしい寂莫の島に眠ったままつれてゆかれ、目覚めたとき、
歩く力もなく友もなく助けもなくどこにいるのかをも知らず、
そこから逃れ出る方法をも知らない人間のように、恐怖に襲われる」 (04/3/2)*2
             (パスカル『パンセ』693)
 

*1:この断章のすぐ後に「これらの無限の空間と永遠の沈黙を私はおそれしめる」と記されている。

*2:久しぶりに『パンセ』をひも解いてみた。以前の線引き箇所だけ流し読み。パスカルは哲学者だなぁ〜と思った。以前はそんなには感じなかったんだけど。