【 帰納法  】  

帰納法
個々の現象から一般的結論をみちびきだす手続き。
因果関係を研究する<帰納法>。J.S.ミルによる五つの研究法。

1)一致法
研究しようとする現象のおこる二つまたはそれ以上の事例でただ一つの事情だけが共通のときに、この共通の事情は、その現象の原因または結果である。
2)差異法
研究しようとする現象のおこる事例とおこらぬ事例とにおいて、前者にのみ現われるただ一つの事情をのぞいて他のいっさいの事情が共通のときには、そのただ一つの事情はその現象の結果または原因、ないし原因の重要な一部である。
3)一致差異併用法
ある現象のおこる二つまたはそれ以上の事例においてただ一つの事情だけが共通で、その現象のおこらぬ二つあるいはそれ以上の事例においては、その事情がないということ以外に共通点のないときには、それら二組の事例の相違点たる、そのただ一つの事情はその現象の結果または原因、ないし原因の重要な一部である。
4)剰余法
ある現象中からすでに帰納法によって、ある前件の結果として知られた部分をとり去るときは、その現象の残りの部分は、前件の残りの部分の結果である。
5)共変法
どんな現象でも、ある他の現象がある特殊な仕方で変化するにしたがって、自己もまたなんらかの仕方で変化するときは、その現象の原因または結果であるか、あるいは共通の原因の結果である。

この五つの研究法については、なお論議が存しているが、とにかく、このような方法を用いて自然の法則を明らかにしようとしたのであるが、実証主義者のミルは客観的物質世界、そこにおこなわれる客観的法則、これらのことをみとめないので、帰納法による自然法則の成立には、かれは<自然の斉一性>を要求ないし仮定しなければならなかった。

<自然の斉一性>
機能的推理は特殊から普遍へ達するさい、いわゆる帰納的飛躍をなさざるを得ず、これを許して帰納的推理を学的方法足らしめる根拠として、JSミルが提唱した。
自然は同一事情の下では、同一現象を起こすような統一ある秩序を保っているという原理ないしは公理。帰納的推理はこれを大前提とする演繹的推理である。